憧れのあの人と着衣らぶえっち〜年上の御曹司はランジェリー姿の私を溺愛する〜

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「……いつまで見てるつもりだ」  私を腕の中に抱き込んだカイさんは、低い声で背後に立つ人物を威圧する。その人は何事か喚いたけど、こっちはそれどころじゃない。 「もも」  もう一度甘い声で私の名前を呼んで、今度は私の顔を上向かせてかぶりつくような深いキスをする。その熱い舌に翻弄されて思わずコートにしがみ付いて。  くしゃりと私の髪を掴んで貪るようなキスを贈られ、私はクラクラと眩暈がした。  苦しくなって。  空気を求めて顔を背けた。  熱く触れ合ってた唇が僅かに離れ、どちらのものか分からない銀色の糸が繋がる。唇を僅かに触れさせながら、カイさんの熱い息が吹き込まれて、息が上がった私は瞑っていた瞳を開けた。  街灯がチカチカと点滅してカイさんの顔を仄暗く浮かび上がらせる。その瞳は強く光り、私の顔を覗き込んだ。 「もも」  ああ、その声やめて。囚われそうになる。  私はグッとカイさんの胸を押して身体を離した。カイさんの腕は私の腰に回されたまま離れない。もう一度カイさんの身体を押すと、今度は大人しく腕が離れた。離れた身体の隙間に冷たい風が流れる。 「…もう、いません、よ」 「……ああ、そうだな」 「…カイさん、私…もう大丈夫ですから」 「…ダメだ。今夜はホテルに泊まれ。ああいう手合いはまた繰り返し来るんだ」 「あの」 「いいから。ほら」  カイさんはあっさり私から離れると助手席のドアを開け私を座らせる。大人しく助手席に収まると、カイさんはどこかに電話をかけてから運転席に乗り込んだ。前を向いたままカイさんが呟く。 「ホテルまで送る」  そう言って、静かに車を発進させた。 「すまなかった」  オレンジの明かりが窓の外を流れていく。遠くのビルの明かりを見つめているとカイさんが話しかけてきた。  フロントガラスにぼんやりと浮かび上がる私たち。 「…いえ、助けていただいてありがとうございます」 「ホテルは押さえてあるから、気にしないで今夜は泊まるといい」 「でも、あの…」 「防犯のしっかりした場所じゃないと安心できないからな。それに……俺からの謝罪だ」 「…謝罪?」 「不快だっただろ」  カイさんは真っ直ぐ前を向いたまま静かに話す。その顔を見つめても、こちらを一切見ない。 「…助けていただいたので」 「それならあれくらい何でもない?」  カイさんは自嘲するように口元を歪ませた。  私は俯いて膝の上の自分の手を見つめる。  酷い。そんな言い方ってない。 「…そんな訳ないじゃないですか…」  私の小さな呟きは、カイさんには届かなかった。
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