防衛作戦 ~ 司目線 ~

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…椅子から崩れ落ちる、司の身体を。 後ろから剛が腕を伸ばし、支える。 「祐希、ありがとうな…」 剛からの謝辞に、祐希は笑顔で首を左右に振った。 そうして燃えるような赤毛を、母親らしい手つきで撫でる。 「お礼は不要ですよ。 この子は私にとって、何時までも。 “可愛い赤ちゃん”ですから」 「クク、コイツに面と向かって言ってみな。 切れ散らかして、暴れまくるだろうぜ」 「ふふっ、でしょうね。 それも又、可愛らしいですけど」 愛おしげに撫でる手は離さず、祐希は司の顔を見詰めた。 「生きて欲しいから…口実を付けてでも。 潜在能力を強制的に上げました」 「後は、“仕事にかこつけて。 感覚を研ぎ澄ませ続けて居れば。 更に能力は格段に向上する”ってか?」 剛の問いに祐希は笑顔で頷く。 「はい。否応なしに」 「分かった。んじゃ、クソガキを連れて帰る」 祐希と話しを済ませ、剛は安堵の笑みを浮かべつつ。 己が血を分けた息子を肩に担ぎ、研究室を後にした。 「どのコースを辿っても、結局は“電池切れ”ですか」 …建物から出るなり、要と出くわし… 「皆で可愛がり過ぎたかもな?」 「“来たる日”まで、このペースでお願いします。 回復方面は俺が直々に、嫌と言う程食わせてやります」 「ソッチは任せた」 笑顔で返事をする剛へ、要は近付き司を受け取った。 肩に担いだ片割れの背を叩き、要は口を開く。 「コイツは“大人げの無い爺”になります」 「俺も是非ともソイツを見てから寝ちまう予定だ」 剛の返事を聞き、要は顔を伏せた。 「…皆で、コイツを…っ… …失礼、します…」 言葉が詰まり、背を向けた要は。 そのまま場を辞し、寮へと帰っていった…
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