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夜道
半日ゲーム漬けの時間を過ごし、gameoverの画面を見た後、畳の床に寝転がった。
畳の部屋はいい。
寝転がりたいときに寝転がれるし落ち着く。
フローリングの部屋が好まれるけれど、金が溜まってもっといい部屋に越せることになっても畳のある部屋を探したい。
横目で壁にかかっている時計を見ようとして洗濯物の塊が目に入った。
もう一週間近く洗濯機を回していない。回そうと思ったことは何度かある。
しかしそのたびに洗濯用洗剤が無いことに気づき、仕事終わりに買って帰ろうと思って毎度忘れて帰宅を繰り返していた。
「はあ・・・。」
また明日にしようか考えたが、流石に下着が底をついた。それに昼に食パン一枚食べたっきりで腹が減っていることに気が付いた。
時刻は午後十時半過ぎ。スーパーは閉まっている。割高だがコンビニに行くしかない。
着ているTシャツのにおいを嗅いで、ちょっと汗臭かったが誰に会うわけでもないしいいかと投げやりになり、手っ取り早くスマホと財布とカギを手に取り部屋を出る準備をした。
ドアを開けると秋らしい肌寒い風が吹き込んできた。
ずっと部屋にこもっていたから新鮮な空気が心地よくて、小さく深呼吸した。
そして、すこし歩き出てから半袖のTシャツで外に出てきたことを後悔した。
「寒い。」
ふと空を見上げると月が浮かんでいた。
満月に見える。多少かけていてもわからないがたぶん満月だ。
ふと、遠くから足音が聞こえてきた。
これはハイヒールの足音だ。しかも走っているようだった。
それが分かりとっさに後ろを振り返った。女性が夜中に走っているなんて、何かあったのかもしれない。
彼女は反対車線にいた。そして、わき目も降らず必死に走っていった。
俺はその場に立ち止まってその姿に圧倒されてしまった。
そのあと彼女の後ろを見たが誰も追っては来なかった。
彼女は何のためにあんなに必死に走っていったのだろう。夜中に。一人で。
誰かに助けを求めるために走っているなら、俺ここにいますよと、思ったが、同時に関わらずに済んでホッとしている自分もいた。
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