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筒井 圭くん/espressivo
「須賀くん、今、いいかな?」
「あ、うん…」
よく見ると同じクラスの人だった。
(確か窓側?の後ろの席に座ってたような…名前は……)
「須賀くん、休み時間も勉強してるんだ、えらいね!」
「……あ、いや、何となく受験勉強の癖が抜けなくて…」
取り留めのない返事をしながら、急な出来事と処理に対処しきれず混乱した。
話す相手もなく、ただこうして教科書を読みながら過ごしている僕を哀れんでいるのだろうか。
そう思うととてもいたたまれない気持ちになってきた。
そんな心境をどうやってやり過ごそうかと思案している中、まだ名前が思い出せない目の前の彼は話を続ける。
「あ、ごめんなさい!須賀くんとお話しするのは初めてですよね。4月の自己紹介の時は緊張して上手く話せなかったし、班も別だったから。あらためまして、筒井 圭(つつい けい)です。よろしくお願いします。」
そう挨拶すると、彼は頭を軽く下げた。
あまりにも自分の醸し出すオーラがよろしくなかったのか、変に彼に気を使わせてしまったようだ。いくら何でもこのままではマズイ。僕も相応の自己紹介と挨拶をしなければ。名前と顔も一致したし、教科書も閉じたし、準備は出来た。
(さてと。)
「須賀 聡です。こちらこそ、よろしくお願いします。ごめんなさい、ぼーっとしてて気づくのが遅かったかも……。」
「気にしなくて大丈夫!」
(明るくて眩しい感じ。筒井 圭…どこの中学出身って言ってたっけ。同じ市内の第一中学だったかな。あそこは市街地で栄えてるから、オシャレで明るい人が多いイメージかな。)
そんな事を考えていると、彼は僕の机の横に来てしゃがみ、何か言いたそうな上目遣いで僕を見上げた。
無意識に僕も彼の顔をじっと見つめた。
色白の透き通るような肌に、明るいもも色の唇。髪の毛はほんのり茶色がかっていて、ふんわりと緩やかなカールが入っている。右目には泣きぼくろ。
[笑顔が眩しい]という言葉はよく聞くけれど、まさに彼にぴったりの表現と言えるくらい笑顔が印象的だ。風で揺れる新緑の木漏れ日と例えてもいい。
なんだか吸い込まれそうな感じさえする…。
「突然話しかけてごめんね、須賀くんに相談したい事があって…。」
「相談?」
(僕なんかに相談されてもな...)
「うん、相談。僕、吹奏楽部に入ってるんだけど、その…いま全然人数が足りなくて。須賀くん、吹奏楽に興味ないかな?」
「吹奏楽??」
「うん、吹奏楽。一緒に楽器吹いて欲しいんだ!」
「?!……」
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