一月一日、晴。

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 一月一日。新年である。  朝遅く起きて、初日の出はもちろん見られなかったが、同居している生き物が窓越しの日の光をバックにゆっくりと水辺から陸地に上がってくる様はなかなかに有難みのある光景だった。  テレビを点けたら孤独のグルメがやっていて、二時間ほどぼうっと眺めてしまう。番組欄を確認したら六時間くらい(体感)ぶっ通しで孤独のグルメだった。なんとも潔い。  二時ごろ散歩に出かける。この冬で一番寒い日中だったんじゃないかと思う。コートにマフラーをしていても冷たさが勝っていた。  いつもの珈琲屋で豆を買い、寒いので一杯テイクアウトする。人通りはまあまああったけれど、大混雑、というほどでもなかった。出店から肉やら何やら焼くにおいが漂っていた。前を歩いていた家族連れが、他の家族連れから「久しぶりー」「おめでとうございますー」と声を掛けられあいさつをしてすれ違っていく。  二時間ほどして帰宅。コンビニで買ってきた焼き芋を食べる。昨日の夜食べた栗きんとんばりに甘い(まだ冷蔵庫に残っている)。  夕飯を昨日の残りで済ませて、もう来ないだろうという予想が外れ来てしまった年賀状の返信を出すためにもう一度外に出る(切った途端に来るのだ)。ポストに投函後、そういえば三が日は夜でも参拝できるのではとそのまま近くの寺に参拝に行く。  地獄の門。  真っ暗な夜の中で、大量のスポットライトに照らし出されたでかい朱色の門を見上げたとき、何故だか頭にその言葉が浮かんだ。天国の門でもよさそうなものだけれども、おそらく自分が生涯を終えたとき目の前に現れるものはこっちなんだろう。  いつもどおり、願い事をどうしようかと何も考えつかないまま賽銭箱の前に立って、何も思いつかないまま百円玉を投げ、どうしようもなく捻り出した答えは「良いことがありますように」(捻ったわりに捻りがない)。まるで去年良いことが何もなかった可哀そうな人のようだが、人並みに良いことはあったと思う。たぶん。  一時間ほどで帰宅。  寝支度を済ませふとんに潜り込みながら、そういえばまだ初夢を見ていないと気づく。いや、そもそも初夢というのは元日、つまり今日の夜見るものを指すのだろうか。  良い夢がみられますように、と再び捻りの足らない呪文を心の中で唱え、就寝。
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