毛布になりたい高柳

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 二日後、佐藤さんの家に私は運ばれた。私を箱から開封すると、目を輝かせて私をじっと見ていた。そして、ぎゅーと抱きしめた。佐藤さんが温かさと柔らかさを噛み締めて喜んでいるのが伝わった。私は誇らしくなった。えっへん。  数日後。冬の休みの朝、私に大事そうにくるまりながら佐藤さんは目を覚ました。よしと言って顔をパンパンと手で叩くと、私から離れてするりと起き上がった。  いつもの佐藤さんより気合いが入っている感じがした。何か大事なことがあるのだろうか。  佐藤さんはお気に入りの洋服に袖を通すと、いつもよりバッチリお化粧をしていた。化粧台で自分の顔をチェックしている。目を大きく開いてみたり、顔の表情をコロコロと変えてみたりしていた。もしかして今日は好きな人に告白するのだろうか。そう思うと私までドキドキしてきた。私は精一杯の声援を送った。佐藤さんがんばれー!  佐藤さんは朝出かけて、なかなか帰ってこなかった。私は告白は成功したのだろうかと気になって仕方がなかったので人間には聞こえないけど一人で大きな声を出した。 「佐藤さん。吉報を心よりお待ちしています。佐藤さんなら大丈夫。家に帰ったら私で休んでね!」  夜になって佐藤さんが帰ってきた。佐藤さんには朝の元気がなかった。まるで別人のように憔悴していた。帰ってくるなり、佐藤さんは着替えずに私にくるまると悲しみに沈んでぽたりぽたりと涙を流した。佐藤さん、ダメだったんだ。ああっ、もうかわいそうに。  佐藤さんは涙で腫れた目をしながら、すらーと涙を流していた。終わらない涙が私を濡らしていく。思う存分、泣いたらいいと思うよ。  佐藤さんが泣き終わると私で顔を伏せながら決意した。 「ふられたけど、絶対いい人見つけるから。絶対に見つけるもん!」  私は佐藤さんに頑張って欲しかった。いつも温かい私だけど、私はさらに温かく柔らかく、体に馴染むような肌触りになるように苦心した。佐藤さんに元気を出して欲しかった。佐藤さんは私にくるまってそのままぐっすり眠った。
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