イジワルな神様

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 試して損はないと考え、私はその申し出をやんわりと断った。がっかりした表情で、彼はその場を去っていった。  さて。これで状況は変わったのだろうか。密かに期待しながら バスを乗り継ぎ学校へ向かう。  2時間遅れで教室に着いた。それでもクラスのほとんどの子がまだ来ていなかった。これは想定内だ。そしてもうすぐ臨時休校を知らせる校内放送が流れるはず。学生の半数近くが昼までの登校は難しいことが判明するからだ。  ほどなくして想定どおりの放送が流れ、待機していた私たちは下校した。家に帰り、驚く母に今日のことを説明した。一刻も早くこの日を終わらせたかったので、疲れたから夕食はいらないと言って自室にこもり、眠ることにした。 「ヨウコ、いつまで寝てるの。遅刻するわよ」 「はぁい」 「さっさと起きて朝ごはん食べなさい」  母は苛立たしげに言い残し、階段を下りていった。  一階に行くと父はすでに出勤した後だった。母だけがテーブルについている。彼女の視線はテレビに向けられていた。朝の情報番組だ。 ちょうど占いのコーナーが始まったところだ。それをぼんやり眺めていると、今日の最下位は射手座……って……え? 「あらやだ。12位ですって」  言ってから射手座の母は私へ視線を振り向けた。 「どうしたの、そんなとこに突っ立って。はやく食べなさい。電車乗り遅れるわよ」  慌てて新聞を手に取り日付を確かめ愕然となった。  だめだった。抜け出せなかった。この無限ループから。  あの時、私は朝倉ユウトと連絡先を交換した。それから登校したものの休校となった。そこへ私が無事学校に着けたかどうか心配をする彼から連絡が入った。休みになったことを告げると、ランチに誘われた。食事のあと、まだ時間があるからとドライブに出かけた。まるで恋人同士のようだった。  アクシデントをきっかけに気になる人との距離が急速に縮まり、こうしてデートまでしている。あの瞬間、私には今日という日が特別な一日に思えた。  だからあんなことを願ってしまったのだ。 「ああ神様、今日と言う日がずっと続きますように」  以来、私はこの特別な日を何回も繰り返している。目覚めるとその日の朝に戻っているのだ。  今まで私の言葉になんか耳を貸さなかったくせに、やっと願いが届いたと思ったらこんな形で叶うなんて。  神様のイジワル!
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