8人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
目を覚ますと、僕は知らない部屋に横たわっていた。薄暗く仄かな明かりで照らされており、何処かのホテルの一室のようだ。だが、やけに妙な感じがする。
だんだんと目も慣れてくると、暗くても部屋の様子が見えてくる。視界に入ってきたものは、辺り一面が真っ白の壁に囲まれていた。
おそるおそる僕はもう一度部屋を見渡してみた。どうもひっかかる。まだ寝ぼけているのだろうか。
しかし、例えこれが夢でも現実でも、一刻も早くこの場所から出なければならない。なぜかそんな思いに心は急かされていた。
やはり何かがおかしい。
「あれ?」
頭が冴えてきた。それと同時に、この部屋の違和感が何だったのかわかった気がした。どこにでもあるものが、ここにはないのだ。
それが何なのか、すぐにはわからなかった。だが、僕はこの部屋に一体どうやって入ってきたのだろうか。全く記憶がない。そう感じた瞬間、スゥーッと背中に冷たい水のようなものが走った気がした。
よく見れば、誰でもすぐにその違和感に気付くことになる。この部屋にはドアがない。おまけに、窓が一つもないのだ。一体ここは何処なんだ。
この白い空間に、僕は小さな不安と緊張を抱き始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!