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「やっと気がついたのね」
知らない女性がいる。か細い声で僕を呼んだ。
髪はストレートで肩よりも長く、ひょろっとした細身の体型ではあるが、その目は陰鬱をひそめ、しっかりと僕を捕らえていた。
「随分長く眠っていたのよ。昨日は楽しかったわね。でも、これからって時にあなたったら眠ってしまうんだもの。ひどいわ」
何も覚えていない。なぜ女性がいるのか、この女性とどうやって知り合ったのか。どうしてここで眠ってしまったのか。
一体、何があったというのだ。そして、なぜ記憶がないのだろうか。
わからないことだらけだ。そもそも、ドアのない部屋にどうやって入ったのだろう。それとも、暗くてまだ周りがよく見えていないだけなのだろうか。
それに知らない女性までいる。今の僕には、ぼんやりと記憶の中に埋もれている事実には、まだ到底たどり着くことはできないでいた。
「ここは、真っ白な壁に包まれている部屋でしょ? ねえ、これから私たちが真実を述べるのには、ふさわしい部屋だと思わない?」
真実? 昨日の夜、何があったかを述べよとでもいうことなのか……?
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