白い壁

一年前のある日、僕は一度だけバスに乗った。そしてそのあと、ある事件に遭遇した。とはいっても、実際には僕がバスから降りたあとに事件が発生したようであったのだが。

僕が座席に座ろうとした時、小学三年生くらいの男の子が乗ってきたので、席を譲ったことがある。僕は三駅の区間しか乗らなかったために、立っていてもそれほど問題はなかった。

ただ、僕がバスを降りたあとに衝撃的なことが起こっていた。そのバスで刺殺事件が起きていたというのだ。後にニュースで知って驚いたのを覚えている。その時のバスの色は確か緑だったような気がするが……

それが何か関係あるのだろうか？ 乗り合わせていたとしても、僕には何もなかった。やはり違うか。さっぱりわからない。

バスに乗った最近の記憶なんて、それくらいしか思い出せない。それに、こんなタイミングでそんな恐ろしい話をする訳ないじゃないか。

僕は頭を一度空っぽにする必要があると感じた。そして、ほかの考えを巡らせるのに必死になった。