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「まだ思い出せない? じゃあ、二つ目のキーワードを言うわね。はい、これ」
女性が僕の前に手を差し出して見せたのは、小さな飴玉だった。どこにでもある普通の飴だ。
……飴? それで何を思い出せというのだ。
「さっ、思い出して。早くあなたと楽しみたいの」
また、訳のわからないことを言っている。僕をからかって何を楽しもうというんだ。楽しいことって何なんだ?
女性の眼孔が、まだかまだかと僕の目玉を突き刺すように見つめている。
せっかちにも似たその女性の眼差しは、焦りと小さな苛立ちを僕にもたらした。
女性が僕に何かを求めている。せっかくだから、もう少しつき合ってみるか。
飴……飴……考えるフリをして、頭を掻いたりポケットに手を突っ込んだりした。その時、クシャ、っと指先に何かが触れた。それは小さな玉が入っている袋、まさに飴であった。
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