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『とりあえず、少し時間を下さい・・・』
混乱した頭を、整理したくて。
そしてとにかく、落ち着かなければという一心で。 由鈴は二人の竜にそう懇願(こんがん)し。
その場から逃げ出してきたのだった・・・。
* * *
「って・・・。 頭を整理させても、どうするんだオレ・・・」
『時間をくれ』と言ったものの、期限は特に決めず。
数日経った今では、正直。 途方に暮れた気分だった。
出来るかどうかは、分からないが。 それなりの決心が出来た場合は、あの森へ戻ればいいのだろうかとか。
その内に、迎えが来るのだろうかとか。 そんな事を考え・・・。
だがかといって、今迎えに来られても。 どうすればいいのか、分からなかったりする。
「このまんま、迎えなんて来なくて・・・。
実は、からかわれただけの冗談だったり―――」
そう小さく、希望的観測を呟いて。
だが竜が、偽りの言葉を口にしない存在であるという事を思い出して。 そのまま肩を落とす。
(・・・竜が冗談を言うなんて、一番有り得ない話だな・・・)
そうして結局は、堂々巡りとなって。 由鈴は再びため息を押し出し。右手のグローブを外して、その手の平を空へと掲げるようにする。
その手の甲には、不思議な紋様(もんよう)をした印が刻まれており。
琳樹達と離れた後になって気付いたのだが、胸にも同じような印が刻まれてあった。
そしてそれが多分・・・。 竜の伴侶に選ばれた、証である『聖印』というものなのだろう。
「は―――・・・ぁ」
もう、思い切り。 いっそわざとらしいまでに、胸いっぱいに息を吸い込んで。 盛大なため息を吐いて腰を上げかけた時。
ふっと、何かヒヤッとするような気配を感じて。 由鈴は無意識のままにそちらへと顔を向ける。
と、いつの間に現れたのか。 男が一人、にやついた笑みを浮かべて立っており。
視線をめぐらせば、その男の後ろから。 数人の人間がそれぞれに手に武器を持ち、集まってきていた。
(山賊か、追い剥ぎかな・・・?
でも、何だろう・・・?)
それは一見、ごく普通の人間に見えた。
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