第二章 《竜の聖印》

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「なん・・・だと!?」 「オレを捕まえれば、竜の血が手に入れられるって?  その程度の力では、生粋な竜の足元にも及ばない。 きっと指一本触れる事も叶わないさ」  男の顔に、更に怒りが募り。 それを冷めた目で由鈴は見返し、グッと肘を引き締めた。 「それにあんた、オレの相手にもならないよ。  玲瓏とは、段違いに違う」 「何の力も持たない人間風情が・・・!!  オレは竜の血を持つ、選ばれた人間なんだ!そのオレにそんな口をよく叩けるな!!」 「血がどうだという?  自分の持つ力のほども分からないくせに」  男の顔が、どんどん怒気に赤く染まっていき。 手下達に声を張り上げると、自分もまた背中に差していた、銀色にきらめく大剣を抜き放つ。 「竜を呼び出すには、生きてさえいりゃいいんだ。  売り物にはならなくなるだろうが、手足を切り落として。竜王の前に見せつけてやるよ。  どんな顔をするだろうなぁ? 愛しい花嫁が、見るも無惨な姿にされてるのを目にしたら」 「っ―――!!」  舌なめずりをし。 ねっとりと絡み付くような目に、由鈴の姿を映しながら男が言い。  そのあまりの嫌悪感に、由鈴は眉をしかめ。 吐きそうになるのを歯を噛み締め、堪える。  そうして襲いかかってくる手下達を、身軽に避けて。 一人、二人と的確に倒していく中―――。  突如。 目の前で由鈴に向かって剣を振り上げていた男が、目をみはり。 体を硬直させ。  それに由鈴が鋭く息を飲んだ次の瞬間―――・・・。 目の前が紅に染まり、鈍い衝撃と共に脇腹に灼(や)けるような激痛を感じて、愕然(がくぜん)とした。 「なっ・・・―――!?」 「仕留めたぜ・・・?」  男の低く笑う声が、耳に届き。 よろめくように後ろへと下がり、由鈴が脇腹を押さえる。  するとそこからは、鮮血が溢れ。 みるみる内に彼の衣服を、血に染めていった。 「仲間を―――壁に・・・、する・・・なんて!」 「こいつらなんて、オレのただの道具だ。  いくらでも使い捨てはきくのさ」 「ゲスがっ・・・!」  男の顔を睨(にら)み付け、掠(かす)れる声で由鈴は言い捨てる。  だがそれをまるで誉め言葉でも言われたかのように、男は狂喜じみた笑みを浮かべて聞き。
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