第二章 《竜の聖印》

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「あのさ、一つ聞いていい?」 「はい・・・」  何を問われるのかと、少し警戒しながら。 玲瓏が頷く。  すると、由鈴は真っ直ぐにその瞳を彼へと向けて。 ゆっくりと口を開いた。 「玲瓏は、オレが琳樹の花嫁になるのが、分かってた・・・のか?」 「!?」  由鈴の言葉は、全くの予想外のものだったため。 玲瓏は隠しきれずに、明らかに驚いた顔を浮かべ―――。  その結果、返答を聞くまでも無く。 それが答えであるようであった。 「あぁ、良かった。 違うんだ?」  少しほっとしたように由鈴がそう言ったのを聞いて、玲瓏は我に返り。 眉を寄せる。 「なぜ突然、そんな事を―――?」 「いや。 最初、オレの事を敵だと思って攻撃してきたのに、すぐに止めたしさ。  次の日オレが目を覚ました時も、全然驚いてないようだったから」 「―――・・・」  攻撃を止めた事については、理由があるといえばあるのだが。 単なる気まぐれの一つとも言えた。  それに由鈴が、琳樹の伴侶に選ばれた事についても。 ただ玲瓏の主人である彼が、自らの相手に由鈴という存在を選んだのだとというだけで。 それだけの事として、ただ受け入れたので。 大して驚く事もなかったのだ。  ちなみに、由鈴が気にしている『オレは男なのに』については。 確かに珍しい事ではあるが、竜は性別というものに、あまりこだわらない質なため。 気にもしていなかった。 「それに森での駆けっこも、考えてみればオレの力量を見られたのかなと」 「それについては・・・、認めますが」 「じゃあ、やっぱり?」  少し不服そうに由鈴が言うのを聞いて、玲瓏はすぐにそれを否定した。 「どう、お答えすればいいか分かりませんが・・・。  由鈴さんの力のほどをはかっていたのは、琳樹様をお守りするための力になって下さればと、考えていたからです」 「琳樹を、守るための・・・?」 「はい。 とても琳樹様に懐かれていらっしゃるようですし。 私の剣を避けきった人間に、初めてお会いしましたので。  そんな方ならば、我が王をお守り出来るかと」  その玲瓏の返答に、由鈴は面食らい。  腕を買われていたのだと知って、少し嬉しく思う。 「じゃあ、オレが琳樹の伴侶に選ばれたのは。 好都合だったのかな?」 「いえ・・・。 はい」
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