第二章 《竜の聖印》

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「ごめん―――由鈴。  オレ、由鈴の承諾(しょうだく)も得ずに、勝手に・・・」 「あぁ、それ?」 「・・・うん」  コクンと、琳樹は小さく頷き。  次いで、すがり付くように。 きゅっとまだ小さい手が、由鈴の衣服をつかむ。 「でもっ! でも、オレは由鈴の事―――。  本当に、欲しいと思ったんだ!!」  『欲しい』と、恥じらいもせずに言われて、由鈴は動揺し。  どう反応すれば良いのか分からなくて、口元を押さえ。 恥ずかしさに頬を赤く染めて、少し視線を外す。  だがそれが、拒絶(きょぜつ)された様に見えたらしく。  琳樹は今にも泣きそうな顔をして、爪先を立てて精一杯に背伸びし。  由鈴の顔を覗(のぞ)き込むと、一生懸命に言葉を連ねてきた。 「本当に本当だぞ!?  本当にオレ―――っ!!」 「わ、分かったから!  その・・・、何度も連呼しないでくれ」  ますます真っ赤になって、由鈴はついに音を上げ。  更に言い募ろうとした琳樹の口を塞(ふさ)ぎ。 視線を合わせるように膝を折ると。  苦笑を浮かべ、彼の黄金色の頭を撫でてやる。 「・・・ゆすず?」  不安げに揺れる、藍色の瞳に由鈴を映し出し。 琳樹の唇が彼の名を呼ぶ。  それを見つめて由鈴は、改めて覚悟をするしかないなと、内心で呟き。 また苦笑するしかなかった。 「もういいよ・・・。  オレも、ちゃんと覚悟。 決めてきたから」 「え・・・?」  由鈴の言葉に、琳樹は目を丸くし。  そんな彼に―――まだ幼く小さな・・・。 自分の伴侶になった竜の王へと、ふんわりと微笑んだ。 「これから、よろしくな? 琳樹」 「由鈴―――・・・。 ずっとオレと一緒に・・・、居てくれるの・・・?」 「そうだね。 琳樹が成竜になるまでは、一緒に居るよ」  喜んで明るい顔をしたと思った途端に。 由鈴の言葉で琳樹がまた、しゅんとする。 「成竜になったら・・・。 もう一緒に、居てくれないのか?」  ならば、そんなものになりたくはないと、琳樹が顔を俯かせると。  不意に由鈴が笑った。 「その後の事は、その時に考えるよ。  オレに、ずっと一緒に居てほしかったら。 立派な竜の王になって、オレを惚れさせる事だね」
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