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序章
「ごめん・・・ね」
血に濡れた白い手が、そっと頬に触れる。
涙があふれて、止まらなかった。
悲しくて悲しくて、たまらなかった。
「ずっとずっと・・・、一緒に・・・」
閉じられていく瞳。 途切れた鼓動。
冷たく冷えていく手が、糸が切れたように力を失って滑り落ち。 白い頬を、一筋の涙がこぼれ落ちていく。
「あ・・・ああああぁ!!!!!!!」
叫びながら、愛しい人の身体を抱き締めた。
けれど、もうその瞳に自分を映すことはなく。 そしてその唇は、二度と自分の名前を呼ぶ事は無い。
永遠に―――・・・。
「―――『鈴葉(すずは)』っ・・・!!!」
愛しい人。 大切な人。
守りたかった、たった一人の自分の半対。
「琳樹(りんじゅ)様っ・・・!!!」
『彼女』の失われた世界なんて、要らなかったーーー。
何も欲しくない。 ただ、愛しい人がそばに居てさえくれれば、それだけで良かった・・・。
「お止めくださいっ!琳樹様っ!! そのままでは、貴方のお身体がっ・・・!!!!」
世界なんて、要らない。
何も欲しくない。
未来も希望も、何も望まない。
自分でさえも―――・・・。
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