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雪が降り積もるパール
転校生が、来た。
「よろしくね。えっと……神宮寺、さん。」
ノートに書いてある名前を見て、彼は私の名前を呼んだ。
「……よろしく。っていうか、挨拶とかいらないし。」
「桜堂くん!私、立川紫乃!よろしくね。」
紫乃は、正義感が強くて、学級委員長を務めている。
私は、転校生・桜堂くんをチラリと見て、ドキッとした。
桜堂くんが、私を見つめていたから。
「ちょっと、何?さっきので傷ついたわけ?」
「ううん。可愛いな、って思ったんだ。」
か、可愛い!?
「何だか、強がっているところが、可愛いな〜って。あと、僕は傷つかないから、大丈夫!」
「別に、桜堂くんが傷ついたとか傷ついていないとかは私は関係ないし!っていうか、そもそも、可愛いって、なんで……っ!」
私は教室を飛び出した。
反射的に、桜堂くんが来ないトイレに駆け込む。
鏡を見る。
「え……。」
私の顔は、真っ赤になっていた。
どうしてよ……なんで………。
どうして、真っ赤になっているの?
私は教室に戻る。
桜堂くんと紫乃が、楽しそうに会話を弾ませていた。
私はなぜか胸が苦しくなり、またトイレに戻った。
……きっと、『可愛い』なんて言われたからだ。
そりゃあ、『可愛い』って言われたら、ちょっとは嬉しくなるでしょ?
胸が苦しくなったのは……わからないけど、多分偶然か気のせいだ。
私は一人うなずいて、今度こそ教室に戻った。
家に帰ると、
「あ〜お帰り〜ダイア〜!」
「ただいま、アクア。」
アクアが出迎える。
アクアこと水愛は、私の妹だ。
私は四月生まれの六年生で、アクアは三月生まれの六年生。
つまり、双子じゃないけど学年が同じの姉妹なんだ。
よく双子と間違われる。
確かに私たち、見た目も声も似ているんだけどね。
「ダイア、聞いたよ。『可愛い』って、転校生に言われたって?」
情報、早いな……。
「そ、そうだけど、何?」
「それで、トイレに逃げたんだっけ。ダイア、頑張って!」
アクアは、意味のわからないことを言って、「遊びに行ってくる〜。」と家を出て行った。
どういうこと?
何だか、気持ちがもやもやする。
無意識に胸を押さえると、心臓がドキドキと早く動いていた。
私が学校に行くと、桜堂くんが紫乃と話していた。
「二人、仲良くなったの?」
私はそっとたずねる。
「まあ、仲良くなったよ。」
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