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08.チョコミントアイスをなんのためらいもなく
「とんでもないところに出くわしちゃってどうしようかと思った」
海斗が去って行ったあと、有紗が私にそう告げた。
「だって、桃奈に声かけようと思ったら、海斗くんと話してるんだからさ。うっわ、やべえと思って、慌てて隠れちゃった」
「なにやってるのよ、もう」
私は有紗に苦笑する。
「で、なんの話してたの?」
有紗が興味津々な表情で聞いてくる。
「そうねえ、二人で過ごした日々は楽しかったねって」
「それだけ?」
有紗は拍子抜けした顔。もっと深い話を期待してたのだろう。
「そう、それだけ。そして、新しい彼女さんと仲良くって」
「ふうん、桃奈って大人ねえ」
有紗が少し皮肉っぽい顔で言った。けど、すぐに心配顔に変わる。
「ものわかりが良すぎない? 桃奈って」
「そうかもしれないね」と、私は有紗に笑う。
「ねえ、有紗。今から学食でアイスでも食べない?」
「いいよ。海斗くんとの話でも聞かせてくれるの?」
「そんなこと話すわけないでしょ」
私と有紗は学食のある方へと歩きはじめる。
キャンパスにあふれる学生たちの波の中で、私は学食のテーブルで、チョコミントアイスをなんのためらいもなく食べるだろうと考える。
(おわり)
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