最終話『恋する凡人』

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『透弥、おまえ……どうするつもりなんだ。河上の三男坊が引きこもりのニートだなんて認めないからな』 『ニートって何でしょうか。勝手に決めつけないでください。あなたに認めていただかなくても結構です、世間体が気になるだけでしょうけど』 『当然、気になるに決まっているだろう? 働け、国民の義務だ。働く能力も身体もあるのに、怠慢するな』 「常に一方的で、話にならないんです。会えばわかるんだけど、会わせたくないけど、かなり強烈なキャラクターだから。頭脳明晰で大胆で、勘はいいし人もついてくるような人だから経営者向きなんだろうけど、話をしてると丸め込まれるというか、とにかく厄介で。それならばおまえは何がやりたいんだと問い詰められて、kajoの傘下にはないファッション関係のブランドと、edgeでの仕事が楽しかったと名前を出したら、まだ経営的にはお荷物でしかなかったedgeを立て直せと言われて、この男黙らせてやるかとむきになって働き始めて、今に至る、という」 「実際立て直したじゃないですか、今や優良企業ですし、社員全員から信頼されてすごいじゃないですか。透弥さんがそんなに会社の中枢に関わっているとは知らなかったけど、考えてみればそうですね、納得です」 「まあ結局は、兄の思惑通りというか」 「透弥さんは苦手な人なんていないと思ってたけど、いたんですね、天敵が」
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