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その頃、ロンドン中心部の一角では早口の中国語が飛び交っていた。
「…一走井酒店、就聞到餐館!」
(…そのホテルに行けば、目当てのレストランへは行けるから)
ネイサンは車を降りると、中国語で母親にそう説明した。早朝から車が壊れたと言って電話を寄越してきた母のためにここまで運転してきたのだった。
「謝謝!」
(本当にありがとう!)
「好的。餐館叫『薩伏依』。薄餅的有名店」
(良かった。『The Savoy』っていうところで、パンケーキが有名なのよ)
ネイサンの母はそう言って本土から来た友人と手を取り合って喜んでいた。
どうやら評判を聞きつけたらしく、急遽ここに来ることにしたらしい。
「再見、母親。張女士、一言為定、再見」
(それじゃあ母さん、また。―張さん、母をよろしくお願いします)
ネイサンはそう言うと、何か言いかけた母親を置いてさっさと車に乗り込んだ。
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