ノブリッジ短編

1. 危険の前触れ

珍しくロンドン南部に住む母からネイサンのスマホに電話がかかってきたのは、サンドラやルーシーとの女子会を終えて帰ってきた日の夜だった。

『I called again and again. Xiao Wei.』
(何度も電話したのよ、シャオウェイ)

中国語が混じる英語で話しながら切り出した母に、思わず眉を寄せる。

「Mother, Don’t call me that name. So? What’s matter?」
(母さん、その名前で呼ばないでくれないか？あと用件は何？)

『我朋友中国来(ウォパンヨウジョングォライ)、我一起去倫敦(ウォイーチールンドン)！我門一起去倫敦為賜物和炸魚薯条(ウォメンイーチールンドンウェイゴウムーフージョウユーシュージョウ)。』
（中国から母さんの友達がくるからロンドンを一緒に回ろうかと思ってるのよ！一緒にロンドンを回って買い物をした後に炸魚薯条を食べに行くわ）

「Zhou…Pardon?」

聞きなれない言葉に、ネイサンは思わず英語で聞き返した。

母親が怪訝そうな声を上げて今度は大きな声でゆっくりと発音した。