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その日の夜、咲登子は親に頼み込んで予備校へ申し込むことにした。元々自分だけで勉強をすることに限界を感じていたから、良い機会なのだ。
スマホのメッセージを開くと、友達欄からKIRIYAをタップした。少し震える指先で、キーボードをフリック入力していく。
[あのさ、私、予備校へ行くことにしたんだ。だから、もう図書館に残らなくて良くなった。今までありがとう]
それに対して、暫くしてから既読が付いた。
[そっか、分かった。頑張れ]
たった一つのメッセージで、二人を繋いでいたものは消え去る。こんなにも呆気ないのかと乾いた笑みが漏れた。
それから咲登子は殆ど毎日予備校の自習室へ通った。勉強へ集中している間だけは、彼のことを忘れられる気がしたのだ。
やがて冬からは自由登校になり、登校しない道を選ぶ。
その甲斐もあってか、志望校に合格した。春からは京都で一人暮らしである。
──これでいよいよ、桐谷とも会うことは無い。
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