さよなら、浅き春

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「…………そうだね、女は度胸」  そう呟くと、メッセージのID追加欄を開き、桐谷の新しいものを打ち込んだ。  久々にKIRIYAというアカウントが眼前に広がり、身体が震える。深呼吸をしながら、友達追加を押した。  [須藤咲登子です。卒アル見ました]  そのように打てば、直ぐに既読が付く。それだけの事なのに、肩が跳ねた。  [おう、貞子久しぶり。何で敬語?]  [何となく…………。直ぐに連絡くれって書いてあったけれど、何か用?]  我ながら可愛くない文面だと呆れてしまう。もっと愛嬌のあることが言えないのだろうか。  [明日、卒業式終わった後って何か用でもある?]  [無いよ。引越しの準備しなきゃいけないから]  [そっか。なら、少しだけ時間くれよ。中庭の噴水のところで待っててくれ。来なかったらジュース奢りだから。じゃあお休み]  そこでメッセージは一方的に切られた。咲登子はその文面を凝視しながら、困惑に瞳を揺らす。 「……ど、どういうこと…………?」 ──桐谷のことだから深い意味は無いはず。腐れ縁との別れを惜しもうとしてくれているんだろう。 「…………でも、」  今度こそ、浅き春に決着を付ける番だ。そう自分に言い聞かせながら布団へ潜り込む。
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