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「うっ…、貴方、喋れないでしょう。また、同じでいいですか?では、ご武運を。」
視界は真っ暗だが、聞き覚えのある声がした。その声の主は、すぐに呪文を唱え始めた。
「ちょ!待ってください!!ストーーップ!!」
「なんですか、喋れましたか。申し訳ございません。この度はご愁傷さまです。」
「冷たいのか、礼儀正しいのか…。」
「私は真面目なので。私情は挟みません。」
「思いっきり決めつけられましたが·····!」
「それは申し訳ないときちんと謝りました。本題に入りましょう。貴方は以前人間になった事があるようですね。その姿、お気の毒に。こちらに来るのも初めてでは無いですよね。何かご希望ありますか?」
謝ればいいのか?と思いながら、僕は今1番不思議に思っている事を女神様に問いかけた。
「何故、僕は目は見えませんが、聞き取れて言葉が話せるのでしょうか。」
「ここは天界ですから。思考があれば多少の融通が効くようになっています。あなたの場合、人間だったこともあり、聴力と言語だけ天界の効果で補正が入ったのでしょう。」
「凄いですね。天界。」
「私達もテレパシーだけだと疲れますから。あれ、すごく集中力いるので勝手に話してくれる方が楽なんです。」
「勝手にって…。ま、まぁそれはさて置いて、僕の死因と以前獲得したスキルはどうなりましたか?」
「調べますね。·····死因は豪雨の影響で流され、呼吸出来ず窒息死です。スキルの方は残念ですが、無いです。·····貴方以前、私が転生させた方ですね。何故、よりにもよってその姿になったんですか。スキル、無くなるって言いましたよね。馬鹿ですか、それとも私への嫌がらせですか?」
自分が転生させた相手だと分かると、づけづけと僕に言ってきた。僕がなんて言い返そうかと考えていると、女神様の方から話を続けた。
「あぁー·····。すみません。貴方詐欺にあったんですね。本当にとことんついてない人ですね。同情します。」
「さ、詐欺!?一体どう言うことですか!!」
「貴方をその姿にしたのは、優しい女神のふりをした特殊詐欺グループです。貴方の場合、スキルを奪われる過程で騙されてます。」
「えー…、天界に詐欺があるなんて聞いた事、無いんですけど·····。」
「時代ですね。私達も色々対策はしているのですが、相手が足取りが掴めないようにしてるんです。特殊部隊が、捜査してますがイタチごっこです。」
「何故、そんな事が行われるんですかね。」
「裏社会でスキルが売買されてるからでしょうか。詳しくは機密事項なんで言えませんが。」
「そうですか。僕はじゃあ、これからどうすれば·····。」
「そんな泣きそうな声を出さないで下さい。ここは天界です。一応、そんな気の毒な方々用に保証サービスがあります。」
「天界凄いですね!」
「それぞれの特有スキルを回復させることは出来ません。ですが、保有スキルを得た転生種に限り、スキルを獲得しやすいという情報の提示が許されてます。」
「··········は?」
期待した僕は、衝撃的な内容に思考停止して思わず言葉が漏れ出てしまった。
「無くしたものの復元は許されてません。ですが、入手出来るかもしれないという話は、機密事項ですが、詐欺に合われた方々用に話していいと言われています。」
冷静に考える。あまりのしょぼさに呆れる。
(これ、キレるやつ絶対いるだろ。逆に訴えられそう。誰に言えばいいか分からないが!)
「あ、馬鹿にしてますね。言って損しました。人によっては泣いて感謝する人もいるのに。」
「このサービスで泣く程!?」
「はい。それだけでも救いだと言って。」
「まぁ、何も無いよりはましですね。」
「失ったもの、すぐに取り戻せる程、世の中甘く無いです。で、貴方はどうしますか?時間、そろそろですよ?」
「せっかくなので、また雑草になりますよ。もしかしたら、スキルが得られるかもしれないので。」
「分かりました。」
そう言って女神様は呪文を唱え始めた。
「だから·····じゃないのに。」
小声で聞き取れないまま、僕はまた草へ転生した。
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