女神降臨

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(何度目の土の中だろうか。もう、さすがに人生を始めたい) 僕はそう思って、また目を閉じた。 ✱ 数日後、目を覚ます。今回も雨。でも、僕の気持ちは前回とは違う。なぜなら、僕の近くでのたうち回っているミミズがいるからだ。 (可哀想に、こいつも詐欺にあったのか。今は辛いだろうけど頑張れよ) 声はかけられないが、そう思ってミミズを見ていると 『ぐ、ぐるしい…息ができない』 (うわぁぁぁぁ!!聞こえる!すげー嫌だ!なんか色々辛い!!分かるよ!その気持ち!でもごめん!) 数分後、ミミズは息絶えた。ミミズに転生してから知ったことだが、肺はないので皮膚呼吸している。地面が湿っている所は住みやすいが、雨が降り続くと苦しくて呼吸出来なくなる。人間の時、梅雨時になると道路にいっぱいいて (きもっ) て思ってたけど、今になって思えば辛かったんだろうなと思う。 ✱ 生い茂る草の間から、空を見上げて生活するのはとても退屈だった。最初は良かった。雨上がり虹が見えたり、晴れた日は夜になると星が見えて。でも、数日で飽きる。雨の日なんて、空を見つめていても1日変わらないし。時々、動物や虫がやってきた時はひやひやした。 (また死ぬ!あっち行け!!) そう思いながら日々が過ぎていったある朝 「ユウゴー、ほんとにここの道であってんの?」 「あってる、はず!!」 「ここ、なんだか怖いです…」 「マキナ、心配するな。道はあっている」 近くで人間の声が聞こえた。姿が見えないので、日本人かは分からないが、言葉が聞き取れた。ちょっと嬉しい。 「もう、あたし疲れたよー。帰りたいー」 「マキナー、うるさいぞ、敵が出るかもしれない。駄々をこねるのはやめてくれ」 「地味すぎてつまんない!つまんない!つまんない!」 「シュウジ、こいつなんで仲間に入れたの?」 「すまん、俺のタイプだ」 「はぁ、お前ってやつは…。可愛いなぁ!」 「そこ!ヒソヒソ何会議してんの?」 「なんでもねぇよ♪」 僕の目線からは見えないが、多分、リア充だ。 (はぁ、僕も送りたかったよ!くそぉ!) 僕の方へ、足音が近づいて来る。 「あの、これじゃないですか?」 「お!さすがフミ!確認してみよう!」 僕の背後を周り、2人が正面に来た。1人は男性。10から20代前半。陽キャのいかにも運動できそうな感じ。顔は中の上だな。もう1人は女性。10代ぽい見た目。背は小さめ。陰キャっぽい。2人は手元に持っているチラシと僕を見て照らし合わせている。足音が近づく。残りの2人だろうか。 「どう?2人とも、見つかった?」 「あったぞ!早く来いよ!」 女の声が聞こえ、陽キャが手招きをする。 「ギャハハハハ!何これ、きっもぉ!!まじウケる」 僕を見て爆笑する、高校生くらいの見た目の女。クラスで目立つ群に居そうなやつ。品は無いが見た目は綺麗だ。その後ろにから歩いてきたのは、インテリ眼鏡の男性。20代くらいだろうか。 「ドラクラ・シミア、本当に猿の顔に見えるな」 インテリが僕をまじまじと見る。何だよ。見るな!って言いたい。喋れないのがもどかしい。僕は自分が、何の植物になったのかを初めて知った。が、名前だけではピンと来ない。嬉しい反面、モヤモヤの方が大きい。 「早く採取して戻りましょう。凄く、嫌な予感がします!」 と、陰キャが言うと 「そうだな。シュウジ、収穫手伝おうか?」 「大丈夫、すぐやる」 陽キャがインテリに話しかける。インテリはハサミを取り出し、そっと僕に手を伸ばす。 (恐怖で心拍数が上がりそうだ。心臓無いけど。) 『サクッサクッサクッ』 思いのほか、痛くなかった。髪を切られてる感覚。 「よし、これくらいあればいいだろう」 インテリは手に持った花を見て、満足気だ。 (これが僕がなった花か!確かに猿みたいな顔をしてる。人間の僕だったら、笑っていたかもしれない。複雑な心境だ。) 『ドスン!パキ、パキパキパキ…』 突然、地響きと木が折れる音が聞こえ始めた。 (な、何だ!?) 4人は恐る恐る後ろを振り向く。 「グァァァァァ!!!」 大きな獣のような鳴き声が聞こえた。 「ド、ドラゴンだ!!逃げろぉぉぉ!!!」 と、陽キャが言うと、4人は慌てて走り出した。 (戦わないんか!!) ドラゴンは逃げたあいつらを追いかけず、僕の方を見た。目が合うはずないのに、目が合った気がした。嫌な予感がする。僕のいる方に大きな口を開け、これは… 「ゴォォォォ!」 (嘘だァァァァァァ!!!) 僕は火を吐かれて、焼死した。 ピロン♪ 『擬態を習得しました』
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