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「あなたがなれるのは、濃い文字の項目だけです。」
僕は恐る恐る目を開けて紙を見る。
「ええ?!」
すごい数、減ってる。しかも、人の項目が一つも濃くないんですが…。
「あの、人には僕はなれないんですか?!」
「残念ですね。あなたには素質が無いみたいです。」
えぇぇぇ。…じゃあ、人で生きていた僕は何ですか?
「素質…とは…?」
「魂と体が合わなければ、転生してもすぐ死にます。そうならないために、魂が生まれつき持っている能力や性格のもとを素質と言い、素質診断が行われた結果の事です。肉体と素質が合えば長生きだけではなく、凄い力が発揮される可能性があります。」
「そうなんですか。じゃあ、あの、僕が死んだのって…」
「残念です。あなたには結果の通り、人の素質がなかったのでしょう。前世に悪い女神にでも当たったのかも知れません。災難ですね。」
「人になる前の前世…。僕の前世、わかるんですか?」
「…分かりますけど、知りたいですか?」
「知りたいです!」
「草です。」
「草?」
「ハマスゲという雑草です。家の主人に散々踏まれた挙句、抜いてもしぶとく生えたので、除草剤で根から枯らされて死んでます。」
「辛っ!」
「お気の毒に…。人への憧れと憎しみを見透かされ、短命とわかりながら進められたのでしょう。」
「うぅ…。でも、僕はその時も優しい女神様に当たったんですね。そんな方を悪い女神だなんて酷くないですか?」
「…死ぬのわかってて転生させるって、むごいと思いません?」
「否定は出来ませんが…でも!僕は人になれて、良かったです!」
「そうですか。では先程の失言を撤回いたしましょう。申し訳ございませんでした。」
「別に、謝って欲しいまでは思っていませんでしたが…。意外とあっさり受け入れるんですね。」
「仕事なので。」
「…そうですか。」
「本題に戻りましょう。それで、どうしますか?」
僕は再び紙に視線を戻す。人の項目の次は魔族が書かれている。魔族の中には、濃い文字がいくつか目に入った。しかし、ある疑問が生まれた。
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