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目が覚めると、そこは草むらの中だった。
太陽の光が眩しい。空気が美味しい。ずっと、暗い世界だったような気がする。
僕は小人?になったのかな?それとも、この世界が大きい草が生えているだけなのか。見え方が新鮮だ。
(うわっ!!!)
突然、目の前に蟻が現れた!大きい!あれ?叫んだはずなのに声が出ない!う、動けない!!うわぁぁぁ!!!
《ガサガサガサガサ!!!》
蟻の大群が僕を踏み潰していく。い、痛い!痛い!蟻の足と体が代わる代わる見える。抵抗できない僕の体は、踏まれる度曲がっては戻る。何度も踏ん張ろうと、踏まれては戻るを繰り返していたが、その度に体が切れていくのを感じた。徐々に起き上がることも出来なくなっていった。せっかく転生したのに、何になったかもわからないまま、僕はこのまま死んでいくのか…。意識が遠のく中、僕は思った。
何分踏まれ続けただろう。太陽の眩しさで目が覚めると、体がボロボロになってしまったのを感じた。もうクタクタで起き上がれない。
──回想──
暑い夏の日差しが、ジリジリと照りつける。僕が5歳くらいの時、散歩中、おばあちゃんに買ってもらったアイスを舐めていた。
[ ビシャ]
暑さで舐めていたアイスが落ちると、沢山の蟻達がどこからともなく現れて、地面に染みこんでいくアイスを囲って見つめていた。
そこへ1人の男の子がやってきて、アイスが染みて色の変わった地面を思いっきり踏んだ。すると、蟻達は慌てふためいてウロウロしていた。楽しそうに笑う男の子。足元をよく見ると、踏まれて死んでしまった蟻もいた。僕は可哀想だなと思った。と同時になんて弱いんだろうと思った──。
そんな相手に、今度は自分が踏まれて死にそうになるなんて思ってもみなかった。無力な自分が情けなく思えた。
──回想──
小学校3年の時、クラスで虐められていた男子を助ける事が出来なかった。きっかけはありふれた些細な事だ。皆、違うものを受け入れたがらない。僕は嫌ってはいなかった。彼は、人一倍優しくて素直な男子だった。本当は友達になりたかった。でも、僕は自分がいじめの標的になるのが怖かった。そして、彼から距離を置いた。その後、彼は転校して行った。
他の誰が助けてくれる訳でもない。動けない。声もあげられない。だんだん痛さすら分からなくなっていく。死ぬ時って、こんな感じなのかな。人間の時はわからなかった。もし僕があの時、彼に声をかけてあげられてたら、この状況は変わっていただろうか。今更、後悔しても仕方ない。僕はゆっくり目を閉じた。
ピロン♪
『自己回復を習得しました』
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