0人が本棚に入れています
本棚に追加
ほのかに温かさを感じる。
これは、土の中か。3度目となると安らぎすら感じる。僕は再び眠りについた。
─眠り続けてどれくらいたっただろう。もう、そろそろ目を開けても良いはずなのに何故かあかない。体は動くのに、暗闇から出られない。
(ん?…体は動くぞ?前は見えないが、どんどん土の中を進む…何でだ?苦しくもない。)
状況はよく分からないが、明らかに今までとは違うことは確かだ。上の方を目指して動いてみる。
(うわ!目が見えないのに眩しく感じる!これ以上は上に行きたくない…。)
気持ちは上に行きたいが、本能で行きたくないのだろう。体が動かない。僕は上に行くことを断念した。
(お腹すいたな…。何を食べればいいんだろう…。)
自分が何者になってしまったのか、考える。
(土の中で目が見えないにょろにょろした生物…。)
ひとつ、思い当たってしまった。勘違いであって欲しかったが、多分あっている。僕はミミズに転生してしまった。違うものに変えられたという怒りよりも、焦りと絶望感が僕の頭の中を埋めつくした。
(どうしよう。これからどうやって生きれば…。)
ミミズ。人間社会では一度は目にするだろう。土の中で生活し、微生物と共に土や落ち葉を食べ、糞をすることで栄養のある腐葉土にする。生態系にはとても大切な生物だ。が、生態系ピラミッドでは底辺に属している分解者。つまり、色んな生物の餌になるということだ。目が見えない分、いつ襲われるのかという緊張感に常にさいなまれながら生活しなければならない。(生産者である、植物の時も動けなくて怖かったけど…。)
生まれてしまった以上、餓死して死ぬのも嫌なので、それでも生きなければならない。僕は、日が落ちるのを待ち、落ち葉を食べるのを後にした。
───数日後、ミミズとして生きていた僕に転機が訪れた。日が落ちるまで寝ていた僕は、息苦しさで目を覚ます。耐えられない苦しさに無我夢中で地上へと前進する。
土の感じがなくなり、やっと出られた!そう思った矢先、突然強い水に押し流されてわけも分からないまま気を失った。
最初のコメントを投稿しよう!