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「う〜ん…。」
彼の唸る声を聞き始めて15分。
透明なガラスケースに並ぶ、いくつものブランド財布。
昼食を終えてやってきたのは、駅前にあるデパートだった。
ブランド名では聞くものの、自分で買おうとは思わない額の物に恐縮しつつ
困り顔の彼の横で、私はただ黙って立っているしかなかった。
「実際に見ると、2つどころか全部がよく見えるな…。」
「時間かかって、逆に候補増やしてどうするのよ。」
「でもさ、どれもよく見えない?」
「そりゃあ、今使ってる物と比べたら全部良いに決まってるわ。でも、好みとか機能性とか、選ぶ基準で絞らなきゃ。」
「選ぶ基準かぁ…。」
「例えば、色は?」
「今はベージュだね。」
「柄はついてる?」
「今は付いてない。」
「カードとかは沢山持ってる?」
「あんまり持ってないと思う。」
「大きさとか、何か希望はある?」
「ちょっとでいいから、アクセントがある方がいいかも。」
「なら、これかこれかこれじゃない?私の主観だけど。」
「この3つで選ぶとすると…これが一番しっくりくるかも。」
「じゃあ、これにしない?別に、値段も安すぎるわけでも高すぎるわけでもないし。私もこの3つなら、これが一番好きかも。」
「咲良がそう言うなら…うん。これにする。」
「私がって…まあいいわ。あんまり悩むよりも、直感で選んだ方が意外としっくり来るものよ。」
「俺も最初に気になったのはこれで。でも、前のと少し似てるしどうしようって思ってたんだ。ただ、ボロボロになるまで使うくらい気に入ってるってことは、多少似てる物でも良いのかなって。咲良のおかげで踏ん切りがついたよ。」
「少しでも、力になれたのなら何よりだわ。とりあえず、気に入った物があって良かったじゃない。ほら、早くお会計済ましちゃお。私もお礼に、何か買って貰おうかなー。」
「本当に、何か買ってあげなきゃだね。マジでありがとう。」
「マジメに答えてどうするのよ。大体…」
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