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「よしよし、いい子だ」
まだ生まれてもいない、ただのたまごに向かって、今まで聞いたこともないような柔らかな声を出した。
礼じゃない。
こんなとろけるような甘い声を出すなんて。
思わず目を逸らした。
「なんだか父親にでもなったみたいね」
「父親? どうだろう。僕は今までペットはカブトムシと熱帯魚ぐらいしか飼ったことがないからよくわからないけれど、ペットを飼うって親になるみたいなことじゃないの?」
尖った声が出たのに、おっとりした顔のままのんびりとまっとうな返事を寄越すのが腹立たしい。
「まあ、そうだけど……そうかもしれないけど」
なにも一足飛びに父親になることはないじゃないか。
その前に色々することがあるだろうに。
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