愛は面倒臭いなんてどの口が言う

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愛は面倒臭いなんてどの口が言う

 エスカレーター式の私立で幼稚園から大学まで一緒だった仲間、といえば聞こえはいいが明日香の父親は開業医であり、今いる礼の部屋は暮林家のリビングの倍はあるだろう。  会社社長の娘も、議員の息子もいた同級生の中で、クラスが離れてもなぜか礼と明日香は仲が良かった。  ひょっとしてつき合っているのか、と同級生や下級生から聞かれるたびにふたりは笑って全否定したものだ。 「まさか、まさか、そんなことありえないって」 「そうよ、あり得ないから」  調子を合わせながら、明日香はのんきな笑顔をひっぱたきたくなった。  ありえないだなんて、まるで魅力がないと公言されているようではないか。   言い方ってものがあるだろう。
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