それでいいんだってば。

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 例のグループで推しているYouTuber。そいつらがリアルでイベントをやることになったらしい。休日の昼間だ。迷惑千万だった。  だけど初めて行けそうな場所で行けそうな規模だったから、行くっきゃ無いよね的な雰囲気になった。当然そうなった。私も参加者の頭数に入っていた。参加を表明した覚えもないのに。  それが決まった日、帰宅して本来の趣味のボカロPのSNSを見ていた。  私は息が止まりそうだった。  新曲を生配信、LIVE配信することになったと言うのだ。  それが例のYouTuberのイベントと日時が丸かぶりしているのだ。  別にLIVE配信したからと言って、それが後から見れない訳では無い。  でも好きなことって、好きなものって、その時その瞬間に見たいでしょ。  流れるコメ欄見て『分かる分かる』ってしたいでしょ。  私は約束の週末まで、生きた心地がしなかった。  断りたい。  断りたい。  断れない、なんて言えば良いのか分からない。  断るには、嘘がいる。嘘は嫌い。出来ればしたくない。  なまじ真面目に育ってしまい、罪悪感が拭えないのだ。  私はイベント当日の朝まで、ずっとずっと悶々としていた。  でも妹の言葉で吹っ切れた。 「今日新曲の配信あるの知ってた!?」  ……知ってるよ。  知ってるに決まってんだろ!  見るに、生で見るに決まってんだろ!  私はスマホを、LINEを構えた。そして書き綴った。嘘を。 『ごめん、昨日の夜から熱が出ちゃったから、今日は家で寝てるね』  当然のように私は平熱。  でも送ってしまえばこっちのもの。皆の心配のLINEを流し読みして、申し訳ないなと思いつつも、余裕の朝食をとった。  なんか久々にしっかり食べた気がした。  私はベッドに横になり天井の模様と視線を合わせていた。  時計を一瞥する。本当なら約束の時間だな。  それを裏付けるようにスマホはLINEの通知を連呼する。きっと待ち合わせ場所についだだの、どこだの、遅れそうだの、いつものやり取りをしていることだろう。  別にそれを覗き見たっていいんだけれど、罪悪感もあるし、病人が即座に既読というのも役に入りきれていない気がして自重した。  全てが目論見通りに進んでいるのに。  楽しみなLIVE配信の時間が迫っているのに。  私の気持ちは、なぜかどんどん沈み込んでいく。  ここで現れたのだ。中途半端に真面目で育ちの良い私が。
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