第三章 告白

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「名字に瀬戸焼、名前に伊万里焼、姓名の両方に有名な焼き物の地名を持ってる陶芸家さんに教わった、初めての陶芸体験。俺、すっげぇ楽しかったんです。そんで、ノリノリのノリで作った壺型の湯呑み、俺は最高傑作だと思ったのに、クラスメートたち皆に笑われた。でも、瀬戸さんだけが褒めてくれた」 「壺型の湯呑み?」 「庇うためじゃなく、修正すべき箇所を指摘しつつ、良いところを皆に説明しながら褒めてくれたのが俺は本当に嬉しかったんです。かっこいいって思った。陶芸家、瀬戸伊万里が俺の憧れの人になった瞬間でした」 「壺型……壺型の湯呑み、記憶にあるぞ。覚えてる。でも……まさかな。そんなことは有り得ない」 「瀬戸さん? どうしたんです?」 「いや。今、うっすらとその時の記憶が蘇ってきた気がするんだけど、朧げに浮かんできた中学生の姿が君とは似ても似つかないから、リセットしたところだよ」 「えっ、思い出してくれたんですかっ? ちちちっ、ちなみに、その中学生って、どんな子ですかっ?」 「女子だよ。だから、人違いなんだ。ただ、『壺型の湯呑み』をキーワードにしたら、その子しか浮かんでこないから困ってる。一生懸命に取り組んでる姿が好ましかった、おかっぱの小柄な女の子……そうだ。女子たちに『サーヤ』って呼ばれてた」 「俺です」 「は?」 「それ、俺です。おかっぱでチビのサーヤ、俺です」 「……え?」
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