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「思い出してくれただけじゃなく、ニックネームまで覚えててくれたなんて、俺、めちゃ嬉しいっす」
「あの子が、芳野くん、だった?」
「いかにもっ! 左様にござる!」
「え? 『いかにも』って……え?」
元気の良い武士言葉で肯定の返事を得たものの、伊万里の脳内は混乱の極み。それほど、彼の記憶にふわりと蘇った中学生と、目の前の青年との差異が激しい。
黙々と作業していた小柄なおかっぱの女の子と、自分よりもガタイの良い高身長の青年との共通点がどこにも見出せないのだ。だが——。
「そうか」
君だったんだな。あの『サーヤ』は。
共通点はいっさい見出せなかったが、伊万里は納得した。
姿勢良く座っている眼前の青年の佇まいを見て、納得できた。
「俺も思い出したよ、君を。はっきりとね」
「やった! じゃあ、今の俺のことも知っ……」
「じゃ、今からホテルまで送っていくよ。コーヒー、飲み終わったようだし」
「ふぇっ? なんでぇ?」
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