第二章 自己紹介

2/6

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「すみませんでしたぁーっ!」 「う、うん」 「本当に、本当に申し訳ないです! そして、助けていただき、ありがとうございましたっ!」  床の上で長身をかがめて土下座する青年を見おろし、伊万里(いまり)は辟易しつつ、苦笑する。思っていたよりも青年が元気な様子で、ホッと安心もしている。  モナスティラキ広場で、突然、意識を失った日本人青年を見放すことができず自宅に連れ帰った。失神ではなく眠っているだけだとわかったからだが、目覚めた青年によって倒れた原因を聞かされ、その内容に失礼ながら苦笑を禁じ得ない。  ——俺、憧れのアテネに行けるんだってワクワクと嬉しさとでずっと気が昂ってたせいで日本を出発する前から一睡もしてなくて、いざ現地で観光開始したらカクンっと気が抜けちゃって眠気に負けたみたいです。おおお、お恥ずかしいっ!  機内だけでなく、その前から寝ていないなら三十時間以上は起きていたことになる。  眠気に負けた理由はわかったが、こんな繊細な子がなぜ海外ひとり旅を選んだのか、今どきの若者の危機管理意識に大いに疑問と不安を抱いた伊万里だった。 
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加