第二章 自己紹介

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「ほんっとーに大変なご迷惑をおかけしまして、まことに申し訳なく! 面目次第もござらぬっ。平にご容赦を願い奉りまする!」 「そこまで床に頭こすりつけなくても……というか、なんで、いきなり武士言葉? 武士なの?」 「いえ、一介の高校教師です」 「あ、そう。まあ、とにかく、あれだ。健康上の問題で倒れたんじゃなくて良かったよ。『眠い』って言ってたことを信じて、病院じゃなく俺の家に連れてきちまったこと、君が目覚めるまで実は心配してたからさ」 「もう、ほんと、それに関しては一番感謝してます。意識ないまま病院に運ばれてたら警察沙汰になってたかもしんないし、高額医療費とか請求されても払えないし!」  旅行保険に入ってても万一ってことがありますもんね、と、叩頭の合間に青年が胸を撫でおろした。 「さて、もう謝罪はいいから、テーブルについてくれる?」  その相手に伊万里が片手を差し出す。こうすれば、床で土下座して(かしこ)まっている相手を椅子に引き上げることができると考えたのだ。  体調さえ大丈夫ならホテルまで送ってやるつもりだったが、久しぶりに母国語で話せる機会だ。コーヒーをご馳走する間、日本のことを少し聞きたいという目論見である。
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