驚愕

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「あ~。オッケー。多分君がアリスだな。ええっと、どこまで話した。そうだ、カルロ・レイズは娘のドナーを探しているんだ。目をつけたのがアリシアの身体だ。オリビアの話によると、レイズ部長は闇の組織と裏取引の噂があるらしい。不妊治療に訪れた金持ちの夫婦の受精卵を、マフィアのメンバーの女の子宮に着床させて、生まれた子供の養育費を秘密裏に金持ち夫婦に請求するという悪どいことをしたこともあるそうだ。そのくらい危険な奴がアリシアを狙ってる」 「バカな! そんなことをしたら、その資産家から訴えられるだろう。受精卵を管理するものや、着床させた医師らも黙っていないはずだ」 「そう思うよな。資産家の不妊治療は極秘だったらしい。手術から受精卵の管理、そして着床まで一人の医師が担当して、突然病院を辞めた。あとの行方は分からないし、それを調べようとした助手も急に国に帰ると言って辞職した直後、事故で亡くなっている」  ラルクの顔色が見る間に青ざめていった。  額に手を当てて、苦し気に目を瞑る様子が痛々しい。  ふとアリスは今朝のラルクがSleeping Beautyに会う時間を作るために、早起きして事務処理をしにいくと言ったのを思い出した。  光が危険を冒してまで、どうしてラルクにアリシアのことを伝えに来たのか、アリスは閃きと共に悟った。 「ラルクはアリシアのことが、本当に好きなんだわ」  言った途端に、胸がキュッと絞られるように痛む。身体の無いアリスに感覚があるはずはないのだけれど、まさに差しこんだ寂しさが胸を突いたように思えた。
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