いたずら好きのアリス

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 アリスの目の前の部屋の景色が右へとどんどん流れていく。アリスは声をあげて笑った。 「まるで子供の頃遊園地で乗ったコーヒーカップみたい。あははは……目が回っちゃう」  最高と思っていたら、目の端に赤い色が流れ、それが背の高い男の髪の色だと分かる。男は部屋を横切り傍までやってきて、呆れた声で話しかけた。 「おい。ティルミル。朝から騒がしいと思ったら、何をやっているんだ?」 「ご主人様。止めて下さい。アリスちゃんが右側にいて、止まらないんです」  男がティルミルの頭の上に片手を置いて、回転を止めた。 「意味が分からないな。右側といいながら回っていたら、方向がずれるだろう。一体どっちの方角にいるんだ?」 「ここです」  ティルミルが左手で、右の上腕部の金属部分を指した。 「何だって? ティルミルの腕にいるのか?」  男の顔がアップになり、緑の瞳が鏡面仕上げの金属に映る。  アリスは男の顔をドアップで見ることになり、ドギマギした。 「クラっとするのは、目が回ったせいかしら? それにしても、なんてきれいな瞳! 虹彩が薄くて、まるで湖面に波が揺らいでいるみたい」 「う~ん。俺の目しか映ってないな。どうすればアリスと話ができるんだろう。アリスがいたずらさえしなければ、祖母の前に鏡を所有していた者のように、他所にやったりしないと伝えたいんだが……」  いたずら? 私はそんなに酷いこをとして、前の持ち主に愛想をつかされたのかしら? っていうか、鏡を譲るって変じゃない?   もらう方ももらう方だけれど、鏡に価値があるとも思えないし、私が中に住んでいると知っても、いたずらしなければ置いておくなんて、絶対おかしいわ。  何か思い出せればいいのだけれど……
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