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あれ? ちょっと待って。
コーヒーカップに乗った感覚を覚えているんだから、私にはちゃんとした身体があって、遊園地に遊びに行った経験があるってことね。
それなのに、なぜ今は鏡の中にいるのかしら?
私は死んでいて魂だけが鏡の中に取り残されたってこと?
もし、その推理が正しいのなら、私はいつまで生きていたのかしら?
思い出そうとするとなぜか不安がよぎる。アリスという名前を聞いたときのように……
忘れるってことは思い出したくない過去があるのかもしれない。
そういえば、ここで目覚めたときに、いつもとは違う部屋だと感じたんだっけ。何度も違う部屋で目覚めたのは、私が悪戯をして追い出されたせい?
まぁ、そのうちそこで暮らしていた人達や、自分の家族についても思い出すでしょう。
それよりは、目の前の素敵すぎる男性のことを知る方法がないかしら?
ティルミルはご主人様としか呼ばないから、名前も分からないし、年齢や仕事も気になるところ。
あっ、でも、知ったところで生身じゃない私にはアピールしようがないんだけれど、せめてこの人が知っている鏡の秘密を教えて欲しい。
「ティルミルの腕に移ったついでに、話す機能も借りられたらいいのに。いっそのこと乗っ取っちゃう? そしたら他の部屋も見て回れるかしら」
もしかしたらできるかもしれないと思い、アリスはティルミルの身体を思い通りに操れますようにと念じてから、片手をあげてみてと命令したけれど、ティルミルはカタカタと小刻みに揺れるだけだった。
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