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バタンとドアが開いてティルミルが滑り込んでくる。振動で開いてしまったサイドボードのガラス扉を閉めながら、ティルミルが叫んだ。
「アリスちゃん、いたずらを止めてください。ガラスが割れてしまいます」
いたずら? これが?
ティルミルの声にアリスが正気を取り戻した。途端に鏡の中の嵐は止み、目の前の現実の部屋そのままに、アリスの世界の家具も整然と置かれた状態になる。
ティルミルが鏡の前にやってきて、胴体部分の真ん中を両側にスライドさせレンズを出す。探知されると分かっていても、アリスは逃げなかった。
どうにかして、ロボットと会話することができないだろうか?
「あっ、アリスちゃん、鏡の中にいますね」
ティルミルの頭部のディスプレイ部分に、文字や記号が現れるのを見ていたアリスは、ふとあることを思いついた。
アリスは一人でいるときに、鏡の中のものを変えて退屈を紛らわしている。ならばロボットが見ている前でやってみてはどうだろう?
アリスは鏡の中にいるティルミルの顔に手を伸ばして表示された文字や記号を払いのけ、黒一色になったディスプレイが口頭文字起こしの画面として使えるようにイメージする。
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