いたずら好きのアリス

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 そうこうするうちに、鏡の向こうにいる本物のティルミルの顔には、目と口を象った青白い光が戻った。  まずは、無難な一言をアリスが呟く。 “Hello”  鏡の中のティルミルの顔全体に、Helloの文字が浮き出たのを見て、アリスは小躍りしながら喜んだ。 「やった~。大成功! ティルミルは鏡の顔が変わったことに気づくかしら? それともこれが見えるのは私だけ?」  ティルミルの様子をしっかり観察しようと思った矢先に、ティルミルが顔に手をやりながら、くるくる旋回した。 「わ、わ、わ! 私の顔に勝手に文字が! チェック。チェック。異常なし! ご主人様。大変です。顔が壊れました」  どうやらティルミルは、ご主人様の通信機に直接メッセージを送れるらしい。ティルミルの身体に内蔵してあるスピーカーから、男の声が響いた。 『ティルミル。顔が壊れたとはどういうことだ? 今自動走行中だが、家に引き返した方がよさそうならそうする。電子神経系統に異常がないようなら、ティルミル専用のケアボックスに入って様子をみてくれないか? 今日は早めに帰るから』
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