Sleeping Beauty

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 Never—endingは、二十二世紀に遺体ではなく、生きたまま人を仮死状態にして保存するコールドスリープの技術を発展させた。  価格は遺体で保存する場合の何倍もするため、患者のほとんどが資産家だ。  彼らがかかった不治の病の治療が可能になったころ、Never‐endingから彼らの子孫に、蘇生措置を取るかどうかを確認する。  彼らは生きているのだから、財産は彼らが目覚めるまで信頼できるところで運用されるように手配済みで、血が途絶えていない限り、財産分与に預かろうとする子孫が、彼らを手厚く迎えて介護することになる。  冷凍保存された患者のファイルには、保存前の人体の情報が記載されているが、名前、年齢、性別、国籍、親や、住所などが、どんなに詳しく書かれていたとしても、資産家でない限り、彼らの目覚めを未来で待っている人は皆無と言っていい。  その中の一人をラルクは受け持っていた。  今から向かう特別監察室に、コールドスリープから蘇生したニ十歳の女性が眠っていて、手術は成功したというのに、一向に目が覚める気配がない。  長い金色の髪に縁どられた小さな顔は、卵型で、目鼻口の大きさや配置が完璧な美人だ。  ラルクが、彼女の瞳孔の開き具合や反応をライトで確認するために、瞼を指で押し上げた瞬間、あまりにも美しいバイオレットの瞳に魅入られそうになった。
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