驚愕

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 暫く経った後にチャイムがなり、ラルクに案内されて相沢光が部屋に入って来た。  肩幅が広く胸郭に厚みのあるラルクに比べると、アジア人の光は華奢な感じがする。切れ長な目が印象的で涼し気な顔をしているが、とても賢そうだとアリスは思った。  光はラルクに勧められるまま窓際の一人掛けソファーに腰をかけ、机を挟んだ三人掛けソファーにラルクが座る。アリスから見ると、二人は横向きで向かい合っている状態だ。 「飲み物はどうする? あいにく日本酒はないが他の酒なら……」 「酔いたいのは山々だが、今日は遠慮しておくよ。紅茶をお願いしたい」  ラルクから紅茶とコーヒーを用意するように言われたティルミルが、部屋を出ていくのを見届けてから、光が口を開いた。 「夜分に押し掛けてすまない。実は観察室で君と話したことなんだが、片付くと思った件が厄介なことになりそうだから伝えに来た。僕がここに来たことは内緒にして欲しい」 「分かった。それでどんな厄介ごとなんだ? 今日話したことといえば、……確かアリシアのことで、ヒカルとオリビアにからかわれたぐらいしか思い出せないが、俺の知らない暗号でも含ませていたのか」 「まぁ、そんなところだ。話す前にアリシアについて聞きたいんだが、彼女を待つ血縁関係者はいるのか? 僕は担当医じゃないから個人ファイルを見られない。もしいたら、早急に連絡を取って名乗り出るように伝えて欲しい。そうすれば、アリシアもラルクも危険なことに巻き込まれずに済む」 「思ったより、深刻そうだな。残念ながらアリシアには迎えに来る血縁者はいない。その場合どんなことが起きるのか教えてくれ」
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