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「産婦人科のカルロ・レイズを知っているか?」
「ああ。難病にかかった十八歳の娘がいる部長だろ? 一か月前くらいだったかな、先進医学研究所に部長と夫人に連れられて娘のレベッカが検査に来ていた。そのついでに、俺がアリシアの治療をしている様子をレイズ部長は見学していったよ」
「そうか。その時に目をつけたんだな。部長ともなればアリシアのことを聞き出すことは可能だろうから、アリシアに見受け人がいないことも知っているんだろうな」
「一体何を言いたいんだ? そろそろ俺に分かるように説明してくれ」
鏡に両手をついて、光の話を今か今かと待っていたアリスも、ラルクが苛立ったように発した言葉に激しく同意した。
「そうよ、分析ばかりしていないで早く話してよ」
アリスの苛つきに反応した熱帯魚がテーブルのスクリーンからジャンプする。もちろん鏡の中でのことだが、目の端に動く者を捉えた光がパッと振り向いたので、アリスはキャッと声を上げてしまった。
あまりにも動揺し過ぎて、アリスはやってはいけないと思った映像を思い浮かべてしまい、熱帯魚がEek! と悲鳴の文字を形作る。
光が驚いた表情を貼りつけたまま、鏡からラルクに視線を移すと、ラルクは肩を竦めて首を振った。
これ以上脱線したら、光の気が変わって帰ってしまうかもしれないと焦ったアリスは、再び熱帯魚の文字で、Just talk(とにかく話して)と促した。
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