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「ご主人様。どうかされましたか?」
上着を片付けてきたのか、言葉遣いから執事らしき人間が、……ではなくロボットだ!
トレイにグラスを載せたロボットが部屋に入って来た。
キャスターつきの台座に設置されているのは、薬のカプセルを三分の二ほどカットして伏せたような身体で、その上に横長の楕円形の頭が載っている。顔はディズプレイになっていて、青白い光が、目や口を象っていて愛嬌のある表情を作っていた。
背の高さが、男の胸のあたりくらいまでしかないロボットが、ミョーンと腕を伸ばしてトレイを上に差し出すと、男がお礼を言いながらグラスを手にとった。
男にとっては当たり前のやりとりでも、ロボットと暮らしたことの無い私には、衝撃が大き過ぎる。
私、一体何時代にいるんだろう?
まさか、地球外ってことはないよね?
段々不安になってきた。
でも、言葉が分かるってことは、地球なのかな。
首を捻っていると、ロボットから鏡に目を向けた男が言った。
「照明の反射だろうか。一瞬俺とは違う人影が映ったように感じたんだ。俺の留守中に誰かが入ってきて、ミラーをいじったりしていないよな?」
「もちろんです。ご主人様。もし、ご主人さまから事前に伺っていない者が訪ねてきたとしても、まずはご主人様にお知らせして、連絡が取れない場合は、お通ししません」
「ああ、ティルミルが優秀だということは分かっている。その調子で勤めてくれ」
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