プロローグ

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 鏡を覗き込む赤毛の男の横顔は、真剣そのもので、ピリッと緊張感を漂わせた顔のラインは、贅肉も弛みも見当たらず、見蕩れるほどに美しい。 「わぁ、やばい! 惚れちゃいそう」  これって、一目ぼれ? 私はそんなに簡単に、誰かを好きになるタイプなのかしら?   よく分からないけれど、顔だけでも俳優になれそうなほど超ど級のハンサムなのに、身体を鍛えているのか、ほどよくついた腕の筋肉や胸の厚みに対して、シュッと締まった腰と平らなお腹がとても素敵!  加えて、キュっと上がった形の良いヒップはセクシーで、そこから続く長い脚を間近で見たら、七十歳のおばあちゃんでさえ、私があと五十歳若かったらねぇ~と言いながら、ポッと頬を赤らめてしまいそうだ。 跳ね回っていた私の心を制したのは、男の冷静な声だった。 「ティルミル、奇妙な反応の原因が分かったか?」 「いえ、消えてしまいました。生命的と言っては変ですが、生命の持つ電気信号のようなものを受け取ったのです。今は何も変化が見られません」 「……そうか。第六感というやつかな。機械に頼るようになった人類が失った感覚というか、危険回避能力というか、そんな原始的な能力が俺に備わっていて、気配を察知させたと思うと、複雑な心境だ」 「ご主人様は、科学者であり、ドクターでもありますから、非現実的なものを感じられることはショックなのでしょうか」 「よく分かるな。さすがティルミルだ。もし、さっきと同じような信号をキャッチしたら教えてくれ」
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