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何でわざわざこのアパートの門をくぐって、俺の部屋の前で行き倒れた?
他にもドアが並んでいるだろう?
それが、どうしてよりにもよって俺の部屋の前なんだ?
俺は、早くこのボロアパートから引っ越さなかった事に死ぬほどの後悔を覚えた……
引っ越さなかったのは、当然のごとく金が無かったからだ。大学を卒業後、内定の決まっていた製薬会社に就職出来たとはいえ、新卒の給料などたかが知れている。期待していたボーナスだって入社一年目では無いに等しかった。だがそれでも、今だけの辛抱だと思い仕事に打ち込んできた。そのおかげで営業という仕事には慣れ、成績の方も順調に伸ばせて、職場には友達と呼べる人間もでき、上司ともまあまあうまくやっている。生活にやっと安定が見えてきたって言うのに……
まさに悪夢というやつだ。
俺は落ち込みを通り越し、倒れている女に怒りを感じ始めた。
――余計な面倒に巻き込みやがってッ!
俺は女に向かって思わず手を上げる。と、その時だった。
「トモヤ、どうしたの……?」
部屋の奥から俺に呼びかける、まだ眠そうなノリコの声が聞こえてきた。
『飯田ノリコ』
大学生の頃から付き合っている女だ。
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