第二章 ノリコの憂鬱

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 そんな私をカオリはまた抱き寄せ、子供をあやすように言います。それから、少し疲れたように聞いてきました。 「あのさ、岩国さんのアパートには行ってみたんだっけ?」  私は膝に顔を埋めたまま首を横に振ります。 「どうして行かないの? 合鍵は持ってるんでしょ?」 「本当に仕事が忙しくて疲れていたらトモヤが可哀想だし、私もトモヤに怒られちゃうから……」  すると、カオリは今まで一番深い溜め息を吐きました。どうやら私の答えに更に呆れたようです。でも、直ぐに気を取り直し質問を重ねてきました。 「ねえ、会社は? 会社の方には電話してみたの?」 「私、会社の電話番号知らないから……トモヤに、仕事の邪魔になるから電話はするなって言われてて……」 「場所は? 場所くらい知ってるでしょ?」 「うん……場所くらいなら……」  私がそう答えると同時に、カオリは私の手を握ってすぐに立ち上がり、言いました。 「行こう!」  私は思わずカオリを見上げて言いました。 「行くって、トモヤの会社に……?」 「当たり前じゃん、それ以外に何処に行くっていうのよ?」 「ダメだよ、そんなの……電話さえするなって言われてるのに、行ったりなんかしたら……」  その途端、カオリはさっきよりも更に声を張り上げました。
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