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そんな私をカオリはまた抱き寄せ、子供をあやすように言います。それから、少し疲れたように聞いてきました。
「あのさ、岩国さんのアパートには行ってみたんだっけ?」
私は膝に顔を埋めたまま首を横に振ります。
「どうして行かないの? 合鍵は持ってるんでしょ?」
「本当に仕事が忙しくて疲れていたらトモヤが可哀想だし、私もトモヤに怒られちゃうから……」
すると、カオリは今まで一番深い溜め息を吐きました。どうやら私の答えに更に呆れたようです。でも、直ぐに気を取り直し質問を重ねてきました。
「ねえ、会社は? 会社の方には電話してみたの?」
「私、会社の電話番号知らないから……トモヤに、仕事の邪魔になるから電話はするなって言われてて……」
「場所は? 場所くらい知ってるでしょ?」
「うん……場所くらいなら……」
私がそう答えると同時に、カオリは私の手を握ってすぐに立ち上がり、言いました。
「行こう!」
私は思わずカオリを見上げて言いました。
「行くって、トモヤの会社に……?」
「当たり前じゃん、それ以外に何処に行くっていうのよ?」
「ダメだよ、そんなの……電話さえするなって言われてるのに、行ったりなんかしたら……」
その途端、カオリはさっきよりも更に声を張り上げました。
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