第二章 ノリコの憂鬱

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「だって、こんな事でトモヤの仕事の邪魔しちゃトモヤに悪いし……」 「もう!」  カオリは、怒ったような、呆れたような顔をしました。でもすぐに、 「……じゃあ、しょうがない。BN製薬の人に声を掛けて、その人が岩国さんの事を知っていたらノリコに電話を掛ける様に伝言してもらおう。それならいいでしょ?」 「うん……」  そう答えたものの、あまり納得は出来ませんでした。  しかしカオリは、そんな私には構わず、 「とは言っても、こう人が多くちゃ誰がBN製薬の人なんだか……まあ、テキトーに声を掛けてれば、そのうち当たるか」  と、ビルの中に入ろうとしていたトモヤと同い年くらいのスーツ姿の男の人に声を掛け始めたのでした。 「あっ、すみません、失礼ですけどBN製薬の方ですか?」 「ええ、そうですけど、なにか……?」 「ヤッタ! 一発目で大当たり!」  男の人の答えを聞くなりカオリは、はしゃいでそんな声を上げ、それから不思議そうな顔をしているスーツ姿の男の人をよそに後ろに立っていた私に声を掛けてきました。 「ねえノリコ、この人に彼氏への伝言頼もうよ」  私が渋々頷くと、カオリはスーツ姿の男の人の方に直ぐに向き直り言いました。 「あの、岩国トモヤって奴なんですけど、ご存知ですか?」
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