第二章 ノリコの憂鬱

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 その時、私はハッキリと見ました。カオリが岩国という名前を出した途端、その人が異様に顔を歪ませたのを。私もカオリも思わず驚きを隠せない顔をしましたが、先に口を開いたのは男の人の方でした。 「後ろの子、もしかして岩国の彼女……?」 「ええ、そうですけど……」  私は驚いたまま、そう答えます。 「やっぱりか。前に写真を見せてもらった事があるからさ……でさ、アイツ一体何があったの……?」  私は、何が何だか訳が分からず戸惑いました。  すると、そんな私に代わってカオリが強い口調で答えました。 「あの、何があったか知りたいのはこっちなんですけど……!」  しかし、スーツ姿の男の人は考え深げにうつむき、 「そうか、知らないのか……」  と言い、それからパッと顔を上げて言いました。 「岩国なら、会社辞めたよ」 「えっ?」  私とカオリは、同時にそんな驚きの声を上げてしまいました。そして、私はすぐに男の人に尋ねました。 「あ……あの、何かあったんですか……?」 「本当に何も聞いてないの?」 「はい……」  男の人は言いづらそうに、また顔をうつむけましたが、すぐに顔を上げて小声で話し出しました。
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